会社や国の制度を活用して「使う前に貯める&投資する」が肝心

社会人になったら始めたい「先取り貯蓄&先取り投資」

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社会人になると、毎月一定額の給料が入る安心感から、ついついお金を使いすぎてしまうこともあるだろう。しかし、将来の自分のためにも、多少はお金を残しておきたいもの。

そこで重要になるのが、“先取り”。毎月の給料が振り込まれた時点で、一定額を貯蓄や投資に回すことだ。

先取り貯蓄&投資の方法について、ファイナンシャルプランナー兼社会保険労務士の川部紀子さんに教えてもらった。

手元のお金を「短期」「中期」「長期」で分類する

「先取り貯蓄や先取り投資を行う前に、まずは今後の生活でどのようなお金が必要になるか、考えてみましょう。お金の属性を『短期』『中期』『長期』に分けてみると、考えやすくなります」(川部さん・以下同)

●短期のお金
毎月必要になる生活費のこと。ATMですぐに引き出せる状態にしておくと安心。

●中期のお金
近い将来の目標のために貯めるお金のこと。結婚資金、引っ越し資金、自動車や住宅を購入する際の頭金などが挙げられる。

●長期のお金
老後資金など、遠い将来のために貯めるお金や、使う予定がなく貯めているお金のこと。

「3つの属性に分けることで、それぞれのお金を管理する場所や貯める方法などを分けることができます。例えば、『短期のお金』は日常的に使うお金なので、ATMですぐに引き出せる普通預金に入れておくと安心です。また、月々の生活費として使う分だけを普通預金に入れておけば、お金を無駄遣いする心配もなくなります。社会人経験が初めてでも、1~2カ月もすれば自分がどの程度の生活費で暮らしているか、見えてくるでしょう」

会社の制度を活用して「先取り貯蓄」を実践

「中期」「長期」のお金は、どのように貯めていくといいだろうか。

「ここで“先取り”が出てきます。『中期』のお金は近い将来に使うものなので、ある程度動かしやすい場所に入れておきたいのですが、あえて普通預金よりも引き出しにくいもので『先取り貯蓄』を行いましょう」

給料日に貯める分のお金を分けたり、銀行の定期預金を使ったりする方法もあるが、川部さんは「会社員であれば会社の制度を活用したほうが簡単」と話す。

「会社によっては、『財形貯蓄』という制度を導入している場合があります。これらの制度を利用すると、給料やボーナスから一定額を天引きし、積み立ててくれるので、自分でお金を分けたり口座を開設したりする手間が省けます。給料も天引き後の金額で振り込まれるので、うっかり生活費を使いすぎて貯蓄できなかったということにもなりません」

●財形貯蓄
会社が給料やボーナスから一定額を天引きし、提携している金融機関に送金することで、自動的に貯蓄される制度。貯めたお金には利子がつくが、金融機関によって利率は異なる。

「財形貯蓄」を利用するかしないかは従業員自身が選択できる。利用する場合は、貯蓄に回す金額も自分で決めることができるため、大きな金額を自動的に天引きされるようなことはない。また、引き出したいタイミングで自由に引き出せるため、「中期」のお金として備えやすいだろう。

「『中期』のお金といっても、新社会人だと結婚や引っ越し、住宅購入といったライフイベントの予定がないことも多いため、目的なく貯めることになるかもしれません。しかし、生活をしていると、何かしら大きなお金が動くタイミングがくるものです。そのときに困らないように、財形貯蓄などの社内で申し込める制度を使って『中期』のお金を用意しておきましょう」

ちなみに、財形貯蓄には以下の3種類があるが、基本的にはどれを使っても問題ないとのこと。

●一般財形貯蓄(勤労者財産形成貯蓄)
貯めたお金の使い道を問わない自由な形の財形貯蓄。

●財形年金貯蓄(勤労者財産形成年金貯蓄)
5年以上にわたって貯蓄を行うことで、60歳以降に年金として受け取ることのできる財形貯蓄。年金として受け取ると、利子等は非課税となる。

●財形住宅貯蓄(勤労者財産形成住宅貯蓄)
5年以上にわたって貯蓄を行うことで、住宅購入やリフォームの際に貯めたお金を使う場合に、利子等が非課税になる財形貯蓄。

※財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄あわせて元利合計550万円(財形年金貯蓄のみの場合で、生命保険又は損害保険の保険料、生命共済の共済掛金、簡易保険の掛金等にかかるものにあっては払込ベースで385万円)から生ずる利子等が非課税となる。

「財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄は、必ず年金や住宅資金にしなければいけないわけではありません。年金や住宅資金以外の用途で使う場合には非課税になりませんが、一般財形貯蓄も非課税にならないので、違いはほとんどないといえます。どれを使うか迷うようであれば、利子等が非課税になる可能性があることを踏まえ、財形年金貯蓄や財形住宅貯蓄を選ぶといいでしょう」

国が認める非課税制度を活用して「先取り投資」を実践

「長期」のお金は、引き出しにくいが、資産の増加が期待できる「先取り投資」をしていくといいそう。

「『企業型DC』『iDeCo』や『つみたてNISA』を活用しましょう。『企業型DC』『iDeCo』は原則60歳まで引き出すことができないので、老後の備えとして。『つみたてNISA』は最長20年間非課税で運用できますが、いつでも引き出せるので、目的のないお金を入れておくといいでしょう」

●企業型DC(企業型確定拠出年金)
企業または従業員本人が掛金を毎月積み立て、老後の年金のための資金を「定期預金」「保険」「投資信託」などで運用する制度で、運用した資金は原則60歳から年金として受け取ることができる。運用して得た利益は非課税となる。導入している企業でのみ利用できる制度で、従業員がほぼ自動的に加入するケースと、従業員の意思で加入を選択できるケースがある。

●iDeCo(個人型確定拠出年金)
自身で掛金を毎月積み立て、老後の年金のための資金を「定期預金」「保険」「投資信託」などで運用する制度で、運用した資金は原則60歳から年金として受け取ることができる。運用して得た利益は非課税となる。年間の掛金の全額が所得控除になり、税金の削減につながる。

●つみたてNISA
自身で掛金を毎月積み立て、最長20年間、非課税で運用できる制度。20年の間に得た利益は非課税となる。積み立てできる金額は年間40万円まで。

「勤めている会社で『企業型DC』を導入していたらフル活用し、導入していなかったり金額的に物足りなかったりする場合は『iDeCo』を検討しましょう。『企業型DC』または『iDeCo』を活用したうえで、お金に余裕があるもしくはもっと備えておきたいという場合に『つみたてNISA』を始めるという順番で進めていくことをおすすめします」

まずは「貯蓄5000円」「投資5000円」で始めてみよう

新社会人の場合、先取り貯蓄、先取り投資の金額は、どのように考えていくといいだろうか?

「給料の額や日々の生活費によって先取りできる金額は変わってくると思いますが、可能であれば先取り貯蓄も先取り投資もやっておけると、将来の自分のための備えになります。まずは毎月、先取り貯蓄を5000円、先取り投資を5000円、合計1万円で始められるといいでしょう。このくらいの金額であれば頑張れる、という人も多いのではないでしょうか」

何より大切なのは「始めること」だという。

「働き始めたばかりでどの程度の生活費がかかるかわからないため、『数カ月、様子を見てから』と、先取り貯蓄・投資を後回しにしやすいのですが、そうすると給料全額を生活費に回してしまいがちです。生活費は後からはなかなか減らせないものなので、最初から制度を活用し、残りの給料で生活するようにすると、自然と先取り貯蓄・投資ができるようになりますよ」

新社会人のうちから先取り貯蓄&投資の習慣をつけておくと、将来の自分がきっと感謝してくれるだろう。制度内容を理解し、どの制度を利用するか考えてみよう。
(取材・文/有竹亮介(verb))

お話を伺った方
川部 紀子
FP・社労士事務所川部商店代表、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士。日本生命保険相互会社に8年間勤務し、営業の現場で約1000人の相談・プランニングに携わる。2004年、30歳の時に起業。個人レクチャー・講演の受講者は3万人を超えた。著書に『得する会社員 損する会社員』『今すぐはじめられる NISAとiDeCo』がある。
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